痛みと向き合う ロードマップづくり(Y.K様 出版社編集者)

1.痛みはこうして始まった
よくある“寝違い”だろうと、最初はタカを括っていた。しかしその痛みは首筋から背中にまで広がり、数日経っても収まる気配がない。背中がバリバリに張って仰向けに寝ることもママならなくなり、寒の最中と言うのに、座椅子に座ってまどろむ夜が1月以上も続いた。その頃会った知人は、顔から生気が失せていたと言う。整形外科に行くと、脊柱管狭窄症・頸椎症・滑り症・ストレートネックと数々の病名が付けられ、首から腰の至る所で潰れかかっている脊柱管や椎体の画像を見せられた。ただ、手術にはまだ早いらしく、生活スタイルを改善し、それでも日常生活が困難になったら手術をしましょう、と言うことで放免された。他のドクターの意見も、ほぼ同じだった。
この時から、対症療法めぐりが始まった。むろん医療保険は使えない。
鍼灸に始まり、整体、米国の最新式カイロプラクティック、特注靴や矯正装具などを次々と試みたが、いずれも症状改善にはほど遠く、時間だけが過ぎていった。
2年半ほどが経ち、山梨県のF温泉病院を受診したことで、転機が訪れた。この病院は優秀な療法士の存在で知られており、かつて医療者向け雑誌の取材で訪れたことがある。保険診療内での短時間の施術ではあるが、それでも2年ほど通ううちに、痛みは徐々に和らいでいった。ラッキーだったのは、経験豊かな療法士に巡り会え、自分に合った疼痛緩和法やライフスタイルの改善法などを、手取り足取り教えてもらえたことである。
2.リハビリ施設選びの3要素: 技術・時間・費用
しかし病院でリハビリを受ける際のネックのひとつは、施術時間の短さである。1日の大半と診療代の十倍もの交通費を費やして得た施術時間は、たったの20分。長くても40分。
一方、民間のリハビリ施設ともなると、1回あたり80分前後の施術と指導の時間が確保されている。療法士とのコミュニケーション時間もたっぷりあり、患者にとってメリットであるのは間違いない。もちろん、重要なのは時間の長さだけではない。優れた知識と技能を持ったスタッフの存在があってこその話ではある。昨年、F温泉病院のリハビリ部門を支えて来た療法士の方が中心となって、都心近くに“東京リハビリセンターα(以下、東α)”が開設されたことを聞き、躊躇なく、ここに通うことにした。
ここでひとつ問題となるのは、毎回の高額な診療費負担である。民間のリハビリサービスを受ける際の自由診療相場は、最低でも1回につき1万円超。痛みをとるか、金をとるか。最後はコスパ問題に行き着くのだが、患者にとって辛いのは、背に腹は代えられないことである。
高レベルなサービス、均質なサービス、リーズナブルなサービス。欲張りな患者たちは、企業の本気度を、企業側が考える以上にシビアに、品定めしているように思う。

3.東京リハビリセンターαに期待すること
最近はひどい疼痛から解放されたが、それでも月1~2回のペースで東αに通っている。通うたびに症状の経過を療法士に報告し、評価を受け、次回までのセルフケア方法を、一緒に考えてもらう。慢性疼痛からの解放という長丁場のゴールと向き合うためには、目標を共有してくれる“技能と資質を兼備した専門家の存在”こそが、リハビリ施設選びのポイントであるし、自分が東αに通う理由ともなっている。時間は掛かるであろうが、患者が抱える悩みや疑問の意味を汲み取り、その解決に共に取組む療法士の地道な育成こそが、リハビリサービス企業に課せられた、最大にして唯一の課題だと思う。

課題ついでに、もうひとつ。患者にとっては、自分が受けるリハビリサービスの延長線上に、医療機関が直結しているかどうかが重い意味を持っている。東αが安心して健康を任せられる組織となるためにも、医療機関との密な連携作りを実現されるよう期待している。

4.ロードマップづくりは、“自己チュー” で!
医療従事者は、魔法使いでも占い師でも無い。黙って座れば、ピタリと解決してくれるはずも無い。患者が悩みや疑問を進んで訴えないかぎり、どんな優秀な療法士でも、持てる力を発揮しようがない。大切なのは、密度の大きいコミュニケーションと言える。良い患者ぶって、薦められる治療方針を鵜呑みにするのは、感心出来ない。
自分の症状の改善法は、自分で考え出す。症状の悪化をいたずらに不安がる前に、自分の健康状態を客観的につかむ努力をする。症状を改善したいという強い意志を持ち続ける。身近な専門家の力を最大限利用させていただく(専門家の方、ゴメンナサイ)。
自分が経験から身に着けた“痛み対応へのロードマップ”とは、このように“自己チュー”のカタマリなのである。

K. T様

脳梗塞による片麻痺
【年齢・性別】
40代・女性

【疾患名】
脳梗塞による片麻痺

【経過】
成人前に脳梗塞を発症し、急性期病院とリハビリ病院での入院を経験しました。退院後はしばらく通院リハビリを受けましたが、その後、医療費改定(2006年)により病院でのリハビリを受けることが叶わなくなりました。

【利用のきっかけ・理由】
自宅で生活しつつ、非常勤で仕事をしていますが、酷使してきた良いほう(健側)の手足に痛みが出るようになり困っていました。痛み除去を切に希望していました。そのため、麻痺側の手足のリハビリと同時に、健側のケアをしてくださる東京リハビリセンターαを選びました。

【利用頻度】
月に1~2回ほど、施術を受けています。定期コースではなく、その都度の予約を利用しています。自分の都合によって頻度に差があります。

【施術後の経過】
施術を受けると身体の深部からほぐされた感覚があり、特に健側の痛みが解消し、麻痺の手は動きやすくなります。高橋先生の施術のおかげでスムーズな日常生活を維持することができていると思います。

【自由意見】
高橋先生の「病後何年たっても、回復の可能性はあると確信している」との言葉に力づけられています。多くの病院では脳梗塞患者に対して、失った機能を再学習させる「頑張るリハビリ」がなされます。東京リハビリセンターαでは、機能回復の努力を十全に有効にするための技術があります。すなわち、筋緊張を取り除き、患者の内部に眠る能力を引き出す工夫が為されている印象があります。

S.O様

臼蓋形成不全による変形性股関節症(両股関節)
【年齢・性別】
60代・女性

【疾患名】
臼蓋形成不全による変形性股関節症(両股関節)

【経過】
40代後半より左股関節に違和感を覚え、50代から痛みが増し都内大学病院を幾つか受診するも、皆手術を薦められる。50代半ばで、温存療法を推奨する医師とリハビリテーションに特化した病院に出会い、リハビリテーションを中心とした温存治療を始める。

【利用のきっかけ・理由】
病院の作業療法士の先生より、日頃の体調維持の為、通院しやすい東京リハビリセンターαの髙橋先生の紹介をうける。

【利用頻度】
自分の症状により、月1回や、月2回、週1回と選んでいる。

【施術後経過】
身体全体を診て頂き、リハビリを続けることにより、痛みが和らぎ自分のより良い状態をキープ出来るように努められる。

【自由意見】
毎回のカウンセリングにより、中心となる施術部分や関連する筋肉等身体全体を、時間内にバランス良くほぐして頂き、その時の身体の状態を説明して頂くことで自分の身体の状態が把握出来る様になり、髙橋先生の技術力の高さを感じます。また家でのリハビリ運動を教えて頂くことや不自由さなどの悩み等を、ご相談させて頂くことで自分のモチベーションが上がり、生活に前向きになれたことに喜びを感じます。痛みを諦めずに、リハビリを続けて来られたこと、そしてこの先手術をすることになったとしても、ずっと私の身体のバランスを診て頂ける、言わば人生の伴奏者の様な存在として感謝致しております。

M.T様

水頭症、腰椎圧迫骨折
【年齢・性別】
80代・女性

【疾患名】
水頭症、腰椎圧迫骨折

【経過】
2015年7月、眠剤を飲んでいて夜トイレに行った際に転倒。病院で圧迫骨折の診断となる。その際、頭部の画像は撮らなかった。翌朝、意識消失し救急搬送、左片麻痺の症状が出現し、水頭症と診断される。ICUから一般病棟に移りリハビリテーションを行う。退院後は訪問リハビリテーションを行っていた。2021年より東京リハビリセンターαを利用開始。

【利用のきっかけ・理由】
本人の希望(もっと良くなりたい)、ケアマネジャーの紹介

【利用頻度】
週1~2回

【施術後の経過】
(ご本人より)良いです。体がラクになる。(ご家族より)リラックスしている様子。

Y. K様

医療系NPO法人 顧問
東京に住む78歳の男性です。長くデスク作業を続けて来ましたが、10年ほど前の冬、起きしなに首の痛みを感じたのが、脊柱管狭窄症との付き合いの始まりでした。一見何と言うことも無い、ただの寝違い感のようなその痛みは消えることなく、首から背中へと徐々に広がって来ました。そして半年も経たないうちに、歩行時に腰や右脚が強く痺れるようになり、足首周辺の浮腫が目立つようになりました。

こんなつらい症状を和らげようと、整形外科、鍼灸、整体、米国式カイロプラクティック、足の専門クリニックなどを次々と訪ね回りましたが、気が付けば、ストレートネック、頸椎変形症、腰椎滑り症、脊椎側弯症、腰椎変形症、脊柱管狭窄症と病名だけがしっかりと増えていきました。

発症からここに至るまで、既に2年以上の時間が無駄に流れていました。

症状が相当深刻になったため、いよいよ根本治療のための医療機関探しをしなければならないと考え、以前、医学雑誌の取材で訪問したことのある富士温泉病院(山梨県石和温泉)を訪ねることにしました。

病院長で整形外科医の矢野英雄氏(故人)は保存療法の大家として高名な方でしたが、この病院も以前から、作業療法・理学療法の両面が充実した施設として知られています。
施術時間はたったの20分と言う保険診療の限られた枠内ではありますが、専門医とセラピストの連携のもとに行なわれる治療のおかげで、首と背中の酷い痛みはしだいに和らぎ始めました。けれども、腰から脚にかけての痛みの方は、逆に強まっていました。

そうした折、同病院のリハビリ部門のリーダーのひとり高橋栄子作業療法士が、東京リハビリセンターαに移籍し、充分な時間をとって患者の治療に当たると言う噂を耳にしたので、そちらのお世話になることを即断しました。住まいに近く、優れた技術を長時間の施術に充てていただけることは、患者にとって大きな魅力だったからです。

もっとも全額が自己負担のため、経済的にシンドさが増すのはやむを得ません。それでも山梨までの往復費用と、20分診療のためにまる1日を費やして来たことを考えると、実質的な差はあまり無いような気もします。

後日談ですが、その後脊柱管狭窄の問題箇所が悪化し、保存療法の限界を越えてしまったため、専門病院で2度にわたる外科手術を受けました。ここに新たな問題が登場します。手術がひとまず済んでも、背骨のトラブル原因が完全に払拭された訳では無いからです。手術によって作られた新たな火種が周辺に広がることは出来る限り抑えねばならず、いままで以上に状況に合わせた内容のリハビリの継続が求められるのです。

症状を改善させるために患者は、専門家の助言に沿って地道な自己管理(セルフケア)を繰り返しますが、その結果を正確に彼らに報告(フィードバック)する、つまり患者と専門家が一体となって治療に向き合う習慣が欠かせなくなって来ます。

高橋さんは、『患者さんの可能性を限界まで引き出したい』との思いをモットーに、集会や研究会などで、啓発のための口演を繰り返していると聞きます。

齢を重ねるにつれ、親身に患者に寄り添う医療者のいる施設が身近にあることを心強く感じるこの頃です。